親のがんを会社に報告した|「いつ休むか分からない」と上司に伝えた日のこと

闘病・入院

母の大腸がんが見つかり、抗がん剤治療が始まってから何度か東京の病院へ見舞いに行きました。

何度目の見舞いだったのかは、もう正確には覚えていません。

ただ、そのころ一つ大きく変わったことがあります。

姉と連絡を取ったことです。

姉とは、その時点で20年ほどまともに連絡を取っていませんでした。

そして同じころ、私は会社の上司にも母ががんであることを話しました。

「いつどうなるか分からないので、そのときは長く休むことになるかもしれません」

そう伝えたのを覚えています。

結果だけを言えば、母はそこから1年以上生きました。

でも、そのときの私にはそんなことは分かりません。

家族ががんになったとき、

「会社にはいつ報告すればいいのか」

「まだ元気なのに、長く休むかもしれないなんて言っていいのか」

正解は分かりませんでした。

今回は、そのころのことを書いておこうと思います。

20年ほど連絡を取っていなかった姉

私には姉がいます。

ただ、当時は姉と20年ほどまともに連絡を取っていませんでした。

何か一つ大きな出来事があって絶縁した、というような話ではありません。

お互いに連絡を取らないまま時間が過ぎていった。

気がつけば、それだけの年月が経っていました。

母からたまに電話がかかってきたときに、姉の話を聞くことはありました。

母と姉もけんかをして、連絡を取っていない時期があったようです。

以前の記事にも書きましたが、母は酒を飲んでから電話をかけてくることが多い人でした。

私自身、それが嫌で母からの電話を面倒に感じていた時期があります。

姉との間にもいろいろあったのだと思います。

ただ、私は詳しいことを聞いていません。

姉にも確認していないので、ここで勝手に理由を書くつもりもありません。

分かっているのは、

「母と姉もあまり連絡を取っていなかった」

ということだけでした。

母のがんをきっかけに姉へ連絡した

母の治療が始まり、何度か東京へ見舞いに行くようになったころ。

姉ともタイミングが合うときが来ました。

どちらから最初に連絡したのか、細かいところは記憶が曖昧です。

たぶん私の方からだったと思います。

母から姉へ連絡する様子はなかったので、私が母に確認を取ってから連絡したのだと思います。

久しぶりに連絡するといっても、20年ほどです。

「久しぶり」

という言葉で済ませるには、ちょっと長すぎます。

ただ、このときは昔のことを話すために連絡したわけではありません。

母ががんになった。

治療をしている。

そして、今後どうなるか分からない。

伝える必要があると思ったから連絡しました。

「無理に来なくてもいい」と伝えた

姉と母がほとんど連絡を取っていなかったことは、私も聞いていました。

だから、

「無理に来なくてもいい」

という話をしたと思います。

長い間連絡を取っていなかったのだから、病気になったからといって突然、

「親なんだから会いに来るべきだ」

とは私は思いませんでした。

家族だからといって、すべての家庭が同じではありません。

親子にも兄弟にも、それまで積み重なってきた関係があります。

外から見ただけでは分からないこともあります。

だから、来るかどうかは姉が決めればいいと思っていました。

ただ、姉は来ることにしました。

「もう最後になるだろうから」

そんな話だったと思います。

まだ母は話せる。

まだ普通に会える。

でも、次が必ずあるとは誰にも言えない。

姉もそう考えたのかもしれません。

このころ会社にも母のがんを報告した

そして同じころ、私は会社にも母のことを伝えました。

私は普通に会社員として働いていました。

母は東京の病院で治療を受け、治療のない期間は八丈島に戻る。

私は静岡で仕事をしている。

何かあっても、すぐに駆けつけられる距離ではありません。

母の状態が急に悪くなれば、仕事を休んで東京や八丈島へ行かなければならなくなるかもしれません。

場合によっては、数日では済まない可能性もあります。

だから上司に、

「母ががんで治療をしています」

ということを報告しました。

「そのときは長く休むかもしれません」

そのとき、上司にはもう少し先のことまで話しました。

母がいつどうなるか分からないこと。

何かあったときには、急に休む可能性があること。

そして、

「そのときは結構長く休むかもしれません」

ということです。

まだ休む日が決まっているわけではありません。

来週休みます、という話なら簡単です。

でも、

「いつか分からないけれど、突然休むかもしれない」

という報告です。

言われた上司も困ったかもしれません。

ただ、自分としては何も言わずにその日を迎えるより、先に伝えておいた方がいいと思いました。

親ががんになったら会社にいつ報告すればいいのか

親ががんになったとき、会社にいつ報告すればいいのか。

当時の私は、そんなことを調べた記憶はありません。

何か正式な基準があると思っていたわけでもありません。

ただ、

仕事に影響が出る可能性が見えてきた時点で伝えておこう。

そう考えただけです。

母ががんになったこと自体は、会社に必ず伝えなければならないことではないと思います。

家族の病気は個人的なことです。

一方で、急に休んだり、長期間仕事を離れたりする可能性があるなら話は変わります。

少なくとも私の場合は、

「その可能性があるなら、早めに上司だけには知っておいてもらった方がいい」

と考えました。

これは制度や法律の話ではありません。

あくまで、当時の私が会社員として取った行動です。

でも、いつ休むことになるのかなんて分からない

難しかったのは、母がその時点ではまだ元気だったことです。

がんがかなり進行している。

手術では取れない。

抗がん剤治療をしている。

そう聞けば、とても深刻な状態に思えます。

実際、深刻だったのでしょう。

でも、母本人と話すと普通です。

電話もできる。

歩ける。

八丈島では畑仕事もしている。

抗がん剤について聞いても、

「そんなにつらくない」

と言っている。

そうなると、

「本当に今から会社にそんな話をしておく必要があるのか?」

という気持ちもありました。

それでも、病気が病気です。

いつ状態が変わるか分かりません。

遠方に住んでいる以上、何か起きてから会社に説明していては遅いと思いました。

結果的に、母はそこから1年以上生きた

このとき私は、

「いつどうなるか分からない」

と思って会社に話しました。

姉にも、

「もう最後になるかもしれない」

という感覚があったのだと思います。

ところが、母はそこから1年以上生きました。

今だから、

「まだ1年以上あった」

と言えます。

でも当時は知るはずもありません。

あと1年なのか。

半年なのか。

数か月なのか。

もっと長いのか。

誰にも分かりませんでした。

これは後になってから強く感じたことですが、家族の病気では、この「分からない期間」が結構長く続きます。

「そのとき」がいつなのか分からないまま仕事をする

会社には伝えた。

でも次の日から何かが変わったわけではありません。

私は普通に仕事へ行きました。

母は治療を続けます。

そして、休みの日や予定が合う日に東京へ見舞いに行く。

そんな生活が続きました。

頭の片隅には、

「急に連絡が来るかもしれない」

という気持ちはあります。

それでも毎日は普通に進んでいきます。

仕事もあります。

家のこともあります。

次の日になれば、また会社へ行きます。

家族ががんになったからといって、自分の日常が全部止まるわけではありません。

このころ少しずつ、

「母の治療」と「自分の普通の生活」を同時に続ける

という状態になっていったのだと思います。

姉への連絡も、会社への報告も「早すぎた」のかもしれない

結果だけを見れば、早かったのかもしれません。

姉に連絡したあとも母は生きていました。

会社に「長く休むかもしれない」と話してからも、すぐにその日は来ませんでした。

それから1年以上あります。

でも私は、早めに話しておいたことを後悔していません。

いつ状態が変わるか分からない。

離れて暮らしている。

突然、東京や八丈島へ行かなければならなくなる可能性がある。

そう考えれば、その時点で自分にできる準備の一つだったのだと思います。

家族だからといって、簡単ではない

母ががんになったことで、20年ほど連絡を取っていなかった姉と再び連絡を取りました。

それまでの20年がなくなったわけではありません。

母と姉の関係が突然元通りになったわけでもありません。

私と母の関係だって同じです。

がんになったから、それまでの親子関係が全部きれいになるわけではありません。

それでも、

「もう会えなくなるかもしれない」

となったとき、人は動くのかもしれません。

姉は母に会いに来ることを決めました。

私は会社に母の状況を伝えました。

この時点ではまだ、母がそこから1年以上生きることも、その間に何が起こるのかも知りません。

ただ、

「いつか」ではなく、「いつ起きてもおかしくない」

という感覚だけが、少しずつ現実になってきた時期だったと思います。

振り返って思うこと

親ががんになったとき、会社にいつ報告するのが正しいのか。

今でも正解は分かりません。

病状も違えば、仕事も会社も家庭環境も違います。

ただ、私の場合は、

仕事に影響する可能性があると思った時点で、上司には先に伝えました。

結果的には、そのあとすぐ長期で休むことにはなりませんでした。

それでも、突然何か起きたときに、

「実は母ががんで……」

というところから説明するよりは良かったと思っています。

そしてもう一つ。

家族に連絡するタイミングにも、正解はないのだと思います。

20年間連絡を取っていなかったとしても、連絡する。

長い間会っていなくても、会いに行く。

反対に、会わないという選択をする人もいるでしょう。

家族だからこうするべきだと、簡単には言えません。

私たちの場合は、母のがんをきっかけに、止まっていた関係が少しだけ動き始めました。

そして会社にも、今後急に休むことになるかもしれないと伝えました。

ただ、この時点では母はまだ元気でした。
抗がん剤治療も続いていて、普通に話すこともできる。

結果的に、ここから母の闘病生活は1年以上続くことになります。

このころの私は、これからどれくらい治療が続くのかも、母の状態がどう変わっていくのかも分かっていませんでした。

ただ、何かあったときに動けるように、少しずつ準備だけは始めていた。

今振り返ると、そんな時期だったのだと思います。


【この記事について】

この記事は、母が大腸がんになった際の私自身の経験を、当時の記憶をもとに書いています。

家族の病気を勤務先へ報告する時期や方法は、勤務先の制度、雇用形態、家庭環境などによって異なります。

本記事は特定の対応を推奨するものではなく、「私はこうした」という一つの体験談としてお読みください。

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